Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

朝5時半に自分を部屋から閉め出す

8月25日 木曜日 (1)

きょうは朝早くバヤン・ウルギーを出発して、明日ウランバートルへ発つための中継点となるオラーンゴムへ向かうことになっている。

朝6時半にロビー集合なので、5時半には起きるつもりだったが、気が張り詰めているのでまたまた5時前に目が覚めてしまった。トイレへ行き、顔を洗おうと思って洗面所の蛇口をひねると、水が出ない。

え?

水が出ないのだ。たしか停電は「朝6時から夜8時まで」じゃなかったっけ? いや、そもそも電気ついてるし。「ただの断水」なのだろうか。

とりあえず、トイレはタンクの水で普通に流せたのでよかったけど、さて、どうしよう。

ちょっと様子を見に出かけることにした。

時計は5時15分過ぎくらい。
「5時半になっても私が寝ていたら、ぜったい起こしてね!」
と、ゆうべ同室のS嬢に頼まれて、
「まかせて!」
と力強く請け合った都合上、私が日々愛用している「相棒」着ボイスの
「朝だよ、まだ寝てるんだ? もう起きた方がいいと思うんだけど…」
と優しいささやきで起こしてくれる神戸尊の声をS嬢の枕元にセットして、そーっと部屋を出た。

部屋のドアは立て付けが悪くて、開けるのはいいが、きちんと閉めようとすると、ものすごく力を入れなきゃけないし、しかもみんな寝てる時間だから、それを音を立てないで閉めるのはえらい苦労だ。細心の注意を払って、静かに、しかししっかりと、最後の1ミリまで「ググッ」とドアを枠に押し込んでから、貴重品も鍵も何も持ってないことに気づいた。

げ!( ̄□ ̄;)
もしかして、自分で自分を閉め出しちゃった?

ま、もうあと少し待てば5時半になるし、そしたらS嬢が起きるから開けてもらえばいいや。

抜き足差し足で廊下を歩いて行くと、フロントから上ってくる階段のすぐ脇に、トイレの部屋が1つある。ここの水はどうかな? とのぞき込んでみたら、便器はカピカピにひからびて、「ここ5年くらい水も流れてないし、掃除もしてません」と言わんばかりに茶色い色素がガッチリ沈着していた。

そうだ、フロントにだれかいるんじゃないかな? 断水のことを聞いてみよう。

音を立てずに階段を下りていくと、果たして、ロビーの応接セットのソファに、スタッフが1人、瞑目して鎮座していた。
起きたまま寝てる?

ソファの上には枕と毛布。彼女はここで夜を明かしたのか。スタッフ用の仮眠室とかないのだろうか。

この人、私知ってる。きのうの夕方、外のトイレに行って戻ってきたとき、入り口のところで会った人だ。昭和30年代の日本の「若いお母さん」みたいな服装をしていて、何だか懐かしい感じのする女の人。

私はそのとき、ドアに(たぶん)「入口」とカザフ語で書いてあるらしい文字を、「い、り、ぐ、ち」と声に出して読んでいた(文字を覚えると声に出して読んでみたくなるのが人間の習性なのだ)。すると、通りがかったその人が、
「そう、そしてその反対は、『出口』よ」
と、カザフ語で教えてくれた(←たぶん)。

そう言われて玄関の内側から見たら、たしかに外から見たときとは違う文字が書いてあって、彼女の言うように読むらしかった。「ラフメット(ありがとう)」とお礼をいったが、彼女は他のスタッフに呼ばれて、すぐにどこかへ行ってしまった。

そのときドアになんて書いてあったか、せっかく教えてもらったけど、その場を離れたとたん、すぐ忘れてしまった。写真を撮っておけばよかったなあ。

で、話をもとに戻すと、そのごく控えめに親切な従業員の女性が、夜明け前のホテルのロビーのソファの上で、枕と毛布に挟まれて、きちんと姿勢よく座って目を閉じていたのだ。

彼女は私の気配に気づくと目を開けたので、私は急いで、
「ウォーター」
と言いながら、胸の前で両手を交差して、大きな×印をつくった。

彼女はうなずいて、壁の時計を指さし、
「ノー、ウォーター」
と言って、首を横に振った。

でも、朝5時半に水が止まってるなんて状況は、聞いてないし、予想していなかったし。6時半にはここを出発しなきゃいけないのに、水が出なかったら、みんなトイレも困るし、洗顔もできないし…いったい何時になったら水が出るの?

と尋ねたいのだが、もちろんカザフ語でそんな複雑な質問ができるはずもなく、私も時計を指さして
「シックス、ウォーター、OK?」
(「6時になったら水出る?」と言いたいつもり)
と聞いてみたが、どうも通じなくて、
「ウォーター、ノー」
といって、彼女は壁の時計を指さすばかり。

私は諦めて、「休んでいるのに邪魔してごめんね」という(言葉はわからないので)気持ちを込めて、ぽっちゃりとして温かい彼女の背中に軽く触れて、「OK、ラフメット」と言って、また階段を上がった。

さーて、せっかく早起きしたのだから、ちょっと上の階に上がって、ご来光でも拝むかあ。

4階まで行き、廊下の端の窓から外を眺めると、東の空の底が、得も言われぬ美しい瑠璃色になってきているではないか。これはぜひとも写真を撮らねば。――と思ったが、部屋にカメラを置いたままだ。あーあ。

部屋に戻り、コンコン、と控えめにドアをノックしてみるが、中で人が動く気配はない。もう5時半過ぎているけど、神戸尊の着ボイスでは優しすぎて効かなかったのかな。どうしよう、ぜったい5時半に起こしてあげると約束したのに…。

そうだ、フロントから部屋に電話をかけてもらおうと思い、もう一度さっきの「お母さん」のところへ戻る。
「キャンユーコール、マイルーム? テレフォン、OK?…」
電話の手振りをしながら聞くと、
「テレフォン、ノー」
という返事であった。

サイドチェストの中に隠してあった電話機は、やはり、ただの「たんすのこやし」だったのだ。

でも、「お母さん」は、意外に明るい顔で、壁の時計と1Fの共同手洗いとを交互に指さしながら
「ウォーター、ウォーター」
と言い、指で○の形をつくってみせた。

おお、そういえば、水音がするではないか。

ドアが開け放しになっている共同手洗いをのぞき込むと、同行スタッフのSさんが、今しもシャンプーしているところだった。

どうやら、さっき「お母さん」が、しきりに壁の時計を指さしていたのは、「5時半になったら水が出る」と言いたかったらしい。

部屋に戻ってドアに耳をつけると、すでにS嬢は起きていて、洗面所を使っている様子だった。水音が止まるのを待ってから、ノックしてドアを開けてもらった。やはり神戸尊の声は聞こえなかったらしい。

私も水でシャンプーして、荷物をまとめた。予定通り、6時半に全員集合。

ホテルの人が弁当を調えてくれたらしく、それはオラーンゴムへ向かう途中のどこかで、休憩して食べるということだった。

オラーンゴムまで「車で5時間」、途中の休憩時間を入れると、6時間の道のりだ。そうすると、たぶん、午後の早い時間に世界遺産のウブス湖を見て、まだ明るいうちに今夜の宿に到着できるだろう。オラーンゴムのホテルはどんなところかな。きょうはどんな人々に出会えるのだろう。

何だかわくわくしてきた。



後記

※1 神戸尊の着ボイスは、どうやら鳴らなかったと思われる。翌日私自身が「アラーム鳴らないじゃん!」ということに気づいて、携帯をよく見たら「ドライブモード」がONになったままだった。ドライブモードがONになっていると、アラームが鳴らないのだということが、このとき初めてわかった。

※2 私は朝5時半に鍵を持たずに部屋のドアをがっちり閉めてしまって「自分を閉め出した」と思っていたけど、今になってあらためて考えてみると、果たしてあのホテル、オートロックだったっけ? 同室のS嬢、教えてください!



「モンゴルを知る旅」 記事一覧 に戻る



※ワールド・ビジョン「モンゴルを知る旅」のツアー報告とスライドショーは、ワールド・ビジョン・ジャパン の こちらのページで見られます。


まだまだ終わらないよ。 by たびたま


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。