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親切な人

この話は、いろんなところでしているので、もしかしたら、ご存じ方もいらっしゃるかもしれませんが、たびたまがまだ小学生のときのことです。

(注: 体調不良の方、とくに食欲がない方、そしてお食事中の方は、ここから先はお読みにならない方がよろしいでしょう)。

たびたまは、大病こそ患[わずら]ったことがないけれども、幼いときから常に体調が悪く、体温調節がうまくできず、慢性のひどい偏頭痛や、腹痛や、心臓が締め付けられるような症状に悩まされ、病院へ行っても原因がわからないまま「自律神経失調症」と診断され、漢方薬のお世話になり、鍼灸[しんきゅう]治療に通い、それでもいっこうに体調が改善されず、乗り物に乗れば5分もしないうちに具合が悪くなり、食べたものをすべて戻してしまうのが常でした。

その日もやはり、街へ出るために、曲がりくねった海辺の山道を30分もバスに揺られ、例によって気分が悪くなり、限界まで我慢した挙げ句、もう2つで目的のバス停というところで、ついに力尽きて、派手に吐いてしまいました。ビニール袋も何も持ち合わせておらず、運転手さんに助けを求める余裕もなかったのです。来ていた服は、嘔吐物まみれ。目的のバス停はもうすぐ。この格好でバスを降り、街を歩かなければなりません。恥ずかしく、情けなく、どうしようどうしようと思いながら、途方にくれていました。そのとき、たびたまが下りる一つ手前のバス停で、バスが停車し、後ろから駆け寄ってきた人影が、たびたまの耳元にサッと顔を寄せ
「これ使って」
と囁[ささや]きながら、手に何かを握らせました。茫然としていたたびたまが、ハッと気づいて見上げたとき、その人はもう、後ろ姿。そのまま、振り返りもせず、足早にバスを降りて行きました。顔は見えず、どんな服装だったかも覚えていませんが、細身の、恐らく髪の長い、若い女性でした。10代後半か、20代前半。

その人が手渡してくれたものは、ポケットティッシュの袋でした。1枚2枚しか残っていないような使いかけではなく、封を開けたばかりに見える、たっぷり詰まったティッシュです。当時、たびたまの家では、一番安いちり紙を使っていて、ティッシュは(少なくともたびたま家では)贅沢品でした。田舎のことでもあり、いつでもどこででもタダでもらえるものではないのです。それをまるごとくれたのが、カッコいいと、まず思いました。しかし感慨に浸っているヒマはありません。目的のバス停に着くまで、何分もないのです。大急ぎで、服についた汚物を拭き取りました。おかげさまで、バスから降りたとき、服の汚れは、よく見なければ目立たない程度になっていました。

商店街の裏通りで、失敬してどこかのお店の外の水道を借り、残ったシミを洗い落としました(「バスに酔って服の上に吐いて汚したので洗わせてください」とは、恥ずかしくてとても言えませんでした)。そう暑い季節でもありませんでしたが、その後、服は歩き回っているうちに半乾きになり、幸い、風邪を引くこともありませんでした。その日1日、あのお姉さんに手を合わせるような気持ちで過ごし、地獄で観音様に出会った幸せを、その夜、寝床へ入ってからも、何度も噛みしめました。

たびたまの苦境を、あのお姉さんは、後方の席から目撃していたのでしょう。ティッシュが有り難かったのはもちろんのことですが、自分がバスを降りるのに紛れて、周りの人にわからぬよう、素早く、そっとティッシュを握らせてくれた、その人の優しさに、たびたまは、深く感動したのです。それまでたびたまは、本人が恥ずかしいと思っていることをわざわざ大事[おおごと]にして騒ぎ立てて、これ見よがしに助けてやって、あとで恩に着せるような人しか、見たことがありませんでした。自分もだれかの役に立つときには、あんなふうにさりげなく役に立ちたいものだと、強く思ったものでした。

「親切」ということを考えるとき、顔も名前も知らない、この行きずりのお姉さんが、たびたまのお手本です。いつの日か、あの世でお会いすることができたら、改めて、お礼を申し上げたいと思っています。

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